ほにゃ★うぃき


秀雄と拓朗

_ 【秀雄と拓朗】(第1話)

秀雄は高校2年生。陸上部で長距離を専門にしている。平日は家と学校を往復し、休日は家でごろごろしているいたって普通な男子生徒である。今日も彼は日課である朝練の10kmジョギングを済ませてから教室に向かった。

秀雄「おはよ~」

ごー「おっは~」

ごーは同じ陸上部に所属する秀雄の親友であり、クラスも同じ、席も隣である。いままで苦楽を共にしてきた彼らは大野君と杉山君のような名コンビ。これからもずっとそうであるはずだったのだが・・・

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第2話)

ガラガラッ・・・担任の清先生が教室に入ってきた。清先生は体育教師かつサッカー部の顧問である。粘着質な保健の授業に定評がある。

清「今日はみんなに嬉しいお知らせと悲しいお知らせがあります。」

生徒一同「ざわざわ」

清「まずは嬉しいお知らせから。なんと、うちのクラスに転校生がやってきました!」

清「次に悲しいお知らせです。残念ながらその転校生は男子生徒です・・・」

ごー「どんな人じゃろうね? 陸上部入らんかな~」

秀雄「転校生だけに・・・」

ガラガラッ・・・秀雄がボケようとした瞬間、また教室の扉が開いた

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第3話)

みんなの視線が扉に集中する。そこには細身でやる気のなさそうな一人の生徒が立っていた。

清「この子が今日からうちのクラスの一員となる拓朗君です。みんな、仲良くしましょう。それじゃあ拓朗君、簡単に自己紹介をしてください。」

拓朗「はじめまして、転校生の松田です。松田拓朗、略してマツタクと呼んでください。前の学校ではサッカーをしていました。これからよろしくお願いします。」

清「はい、ありがとう。みんな、まっつんをよろしく頼むよ。」

基本的に清先生は恋愛に関する話以外は他人の話を聞いていない。

ごー「サッカー部か~きっと中距離やらせたら速いんじゃろうね? ・・・秀雄?」

秀雄『うほっいい男・・・』

ごーの言葉は確かに秀雄の鼓膜を揺らした。しかし、秀雄の高鳴る鼓動がそれをかき消したのである。桜が春を告げていた。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第4話)

清「え~と、まっつんの席はどこにしようかな・・・?」

すかさず秀雄が叫んだ。

秀雄「先生、僕の隣が空いてます!」

ごー「空いとらんよ~」(第1話5行参照)

我に返り顔を赤める秀雄。結局、拓朗は窓際の一番後ろの席につくこととなった。秀雄からはちょっと離れた席。しかし数日後、清先生の提案で拓朗とごーの席が交換になり秀雄と拓朗はお隣さんとなるのであった。基本的に清先生はこういうことに関しては勘が良い。間近に存在する拓朗の横顔、恍惚として見入ってしまう秀雄。

秀雄「うほっ・・・」

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第5話)

席は隣になったのだが、秀雄が拓朗に話しかけることは無かった。普段人見知りするわけではないのだが、相手が恋愛対象だと急にうぶっ子になってしまうのである。

秀雄『まっつんに話しかける良いきっかけはないかなぁ・・・』

ふいに拓朗の方を見るとごーが拓朗と話している。

秀雄『チャンス!』

ごー「ふ~んそうなんじゃ~。じゃあまだどの部活に入るかは決めてないんじゃね。」

拓朗「そうなんだよ。この前サッカー部を見学してきたんだけど、男子は球拾いばっかでぜんぜん練習できないからやめようと思ってる。」

ごー「ひどい先輩じゃね~」

拓朗「清先生のせいだよ。」

ごー「そ~なん?!」

拓朗「そ~なんだよ。どっか面白い部活しらない?」

ごー「そうじゃね~走るのが得意なら俺と一緒に・・・」

秀雄「やらないか?」

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第6話)

拓朗「えっ!? 何を???」

ごー「こいつは秀雄って言って、俺と同じ陸上・・・」

秀雄「俺は秀雄って言うんだよろしくね。秀才の秀にオスの雄って書いてヒ・デ・オ! 良い名前でしょ? あっ! でも拓朗にはかなわないか~フフッ」

秀雄の異様なテンションの高さに圧倒される二人。さらに秀雄は続ける。

秀雄「まっつんはさぁ、元サッカー部なんだよね? じゃあ走るのは得意だよねぇ?」

拓朗「まぁ得意だけど・・・」

秀雄「あはっ☆ じゃあ陸上部入っちゃいなよ~実はちょうど中長距離に良い選手がいなくてこまってたんだよ~」

ごー「まぁ俺たちが中長距離をやってるんじゃけどね(笑)」

秀雄「実は俺たちが中長距離をやってるんだけどね~(爆)」

秀雄、ごーを完全に無視。そして秀雄の勧誘トークは続いた。ずっと秀雄のターン。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第7話)

秀雄の数週間にわたる勧誘に心が折れたのか、とうとう拓朗は陸上部に見学に行くこととなった。

秀雄「ここがいつも俺が練習してるトラックだよ。ゆっくり見学していってね。あはっ☆」

拓朗『見学に来たは良いけど、あんまり面白そうじゃないなぁ。でも断るとあの秀雄ってやつがうるさそうだし、何か良い言い訳はないかなぁ・・・』

陸上に対してあまり乗り気ではない拓朗。一方秀雄は拓朗が来ているのでやる気満々。熱心にウォーミングアップを始める。トラックの脇の木ではごーが木登りをしている。

拓朗『つまらんな。もう少ししたら用事があるとでも言って帰ろう。』

その時、春の香りを含んだ風がトラックに流れ込み、それに乗って散った桜の花びらが波のように押し寄せてきた。

拓朗『誰か来る・・・』

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第8話)

ランニングブームは高校生の間にも浸透していた。以前は男子生徒ばかりであった陸上部も最近では女子生徒の数が増えつつある。春風と共に女子生徒達が陸上トラックへとやってきた。さっきまで濁っていた拓朗の眼が鋭く光る。

ブン「森香ちゃ~ん、待ってよ~(笑)」 彼女は人呼んでブンちゃん。基本的に語尾に(笑)が付く習性がある。

森香「・・・フッ」 彼女は森香。無風状態でも髪がなびく特徴がある。クールビューティ。

ブン「あっ、ミキさ~ん、アップしましょうよ~(笑)」

ミキ「良いと思います。」 彼女はミキ。通称ミキミキ。流れに逆らわず、動じない性格。

それから10分もたたないうちに他にも10名近くの女子が練習にやってきた。みんな個性豊かで魅力的。

拓朗『そうだ、陸上部に入ろう!』

こうして拓朗は陸上部の仲間入りを果たした。しかしこれが後に世界を震撼させる悲劇を巻き起こすきっかけになることはまだ誰も知らなかった。

_ 【秀雄と拓朗】(第9話)

拓朗が陸上部で頭角を現すのに時間はかからなかった。天性のスピード、レース展開の嗅覚、そして高いモチベーション。

女子部員「まっつんさ~んファイトー!」

拓朗「もう1周行くゼっ!」 拓朗は健全な男子生徒である。

秀雄『やった! まっつんともう1周走れる!』 秀雄もまた健全な男子生徒である。

清「不愉快だ~っ」 渾身のシュートがゴールネットをゆらす。

こうして二人は切磋琢磨し、記録も向上の一途をたどるのであった。そして二人で朝練、フライング、居残り練習、それが日課のようになっていく。美しい男同士の友情。心の友。永遠の友。はたから見ればそんなところだろう。しかし、それでは成就されない秀雄の恋愛感情。近づく程に遠くなり、手を伸ばすほど離れていく。神の悪戯が二人の運命を歪めていく。

ごー「あっ、雨じゃ~今日は練習サボろ~」

拓朗 秀雄「・・・」

徐々に雨脚が強まっていく。暗雲が空を覆い始めていた。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第10話)

拓朗が転校してきてから2ヶ月。梅雨に入り全国的に食中毒が流行し始めた。

清「みなさんに連絡があります。クラスの原君が食中毒にかかりしばらく入院することになりました。食事には十分注意しましょう。」

秀雄「原だけに腹が痛いって・・・あはっ☆」

拓朗「俺の行ってる松屋はちゃんと管理してるかなぁ・・・」

ごー「松屋は大丈夫じゃろ~。でも駅伝の校内選考会も近いし体調管理には十分注意した方が良いじゃろうね。」

その日の帰り、筋トレを終えた3人が一緒に川沿いを歩いていると川の上流からバナナがどんぶらこ、どんぶらこ、と流れてきた。

ごー「むむっ!? あれはバナナじゃ~」

ごーはバナナを手に取ると、おもむろに食べ始めた。

秀雄「おい、ごー、危ないよ。」

ごー「捨てるのはもったいないけぇ、それに皮で中は守られてるけぇ大丈夫じゃろ。」

翌日

清「ごー君が食中毒にかかりました。」

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第11話)

ごー「う~ん、なんで食中毒になっちゃったんじゃろ? それにしても暇じゃね~誰か見舞いに来んかな~」

ピンポーン☆ 扉を開けると秀雄と拓朗が立っていた。

秀雄「お見舞いに来ました。調子はどう?」

ごー「少しずつ良くなってるけぇ、来週からは復帰できると思う。」

拓朗「いいなぁ学校休めて。まぁしばらくお大事にしてください。」

そう言うと拓朗は手に持っていた花束をごーに渡した。

ごー「ありがとう! おいしそうな花じゃね~」

拓朗「食べないでね(汗)」

そして数分談笑した後、秀雄と拓朗は帰って行った。

秀雄「ごーが元気そうで良かったね。またお見舞い行く?」

拓朗「いや、もう行かないで良いでしょ。何回もおしかけたら迷惑だろうし。」

秀雄「そっか・・・そうだよね・・・」

拓朗「それじゃあまたね。」

スタスタと自分の家へと向かう拓朗。時々刻々と二人の距離が離れていく。秀雄の心が空のように曇り始めた。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第12話)

翌日、拓朗はまたもごーの家へと足を運んでいた。片手には傘を、もう片方の手には花束を握っていた。

ピンポーン

ごー「おや? 拓朗じゃ~今日もお見舞いに来てくれたんかいね~?」

拓朗「まぁ暇やし。」

ごー「ちょうど退屈しとったとこなんよ~ちょっとあがってきんさいよ~」

拓朗「おじゃまします。」

拓朗はごーの家にあがりこむ。勉強の話、陸上の話、清先生の話でもりあがる二人。会話は数時間にもおよんだ。

拓朗「じゃあそろそろおいとまするわ。」

ごー「今日は雨なのにわざわざありがと~それじゃまた今度ね~」

拓朗はごーの家を出て行った。その様子を一人の男が食い入るように見ていた。電柱の陰から、傘もささずに、ただひたすらに。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第13話)

朝、生徒たちが学校へと足を運ぶ。久々の晴天。昨晩の雨粒が日差しで輝く。行き交う人々の表情もどことなく明るい。

ごー「おはよう、拓朗!」

拓朗「おはよ~体はもう良くなったの?」

ごー「もう全快じゃけぇ、心配はいらんよ。ひさびさの部活楽しみじゃ~」

そこに秀雄がやってくる。

秀雄「おっは~☆」

ごーと拓朗「おはよ~」

秀雄「元気になってよかったね。俺たちがお見舞いに行ったおかげかな? あはっ☆ ところで拓朗さぁ・・・」

ガラガラッ・・・清先生が来ると散らばっていた生徒たちが各々の席につく。

清「おはようございます。全体への連絡はありませんが、拓朗君は放課後に職員室に来てください。」

そう告げると清先生はスキップをしながら教室を後にした。清先生が放課後男子を呼び出すという場合はその男子生徒に関する情報(恋愛に関するモノ)を問いただすというパターンがほとんどだ。みんなの視線が拓朗に集中する。転校してまだ3か月、拓朗が腹黒いと言われるようになったのはこれからだった。

放課後、清先生と拓朗が相談室に入っていく。2時間にわたり清先生の質問攻めが行われた・・・ガラガラッ・・・密談を終えた清先生が相談室から出てきた。

清『いや~良いことを聞いた。まずは誰に話そうかな~』

清先生とはこういう人物である。

すると、相談室の前に秀雄が立っていた。清先生がしゃべろうとするより早く秀雄が叫んだ。

秀雄「先生っ、拓朗と何を話したんですか? 教えてくださいっっっ!!!!」

清「ごー君のお見舞いに拓朗君が何回も行ったのは知ってる?」

秀雄「知ってますっ!」

清「そう。実は拓朗君に好きな人ができたらしくて、その相手がなんと・・・」

秀雄「聞きたくな~いっっっっ!!!!!」

そう叫ぶと秀雄は猛スピードで去って行った。

拓朗が惚れた相手がごーではなく花屋の花岡であることを秀雄が知るのはずっと後のことである。

秀雄『ごーさえいなくなれば・・・』

こうして秀雄はダークサイドへ落ちていった。秀雄の報復劇、ここに始まる。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第14話)

関東高校駅伝が近づいたある日、顧問の細井が部員たちを呼び出した。

細井「みんな知っていると思うが、2週間後に駅伝がある。よって選手の5名を決定したのでそれを発表する。」

一同「ざわざわ・・・」

細井「まずは女子から。第一走はブンちゃん、第二走は大村さん、第三走は尾形さん・・・」

ブン「どうしよ~森香ちゃ~ん変わってよ~(笑)」

森香「・・・フッ(自分に与えられた役をこなしなさい)」

尾形「良いと思います。」

細井「第四走はアシダさん、第五走は中川さん」 (注1)

アシダ「ガンバリマ~ス」

中川「私も走るんですか?!」

細井「次に男子。第一走、拓朗。第二走、秀雄。第三走、ごー。第四走、原。第五走、植竹。」

ごー「あれ? 俺はこの前の選考会に参加できなかったのに選手なんかいね~?」

細井「まぁ長距離やってる男子は5人だけだからな。」

ごー「なるほど~そういえばそうじゃったね~」

会議が終り、生徒たちが解散していく。

秀雄「先生、ありがとうございました。これは約束の物です。」

そう言うと秀雄は細井に札束を渡した。

細井「お前も変わった奴だなぁ。こんな金を出してまで駅伝のオーダーを決めたがるなんて・・・わかってるな、このことはみんなに内緒だぞ。」

秀雄「わかっています。それでは失礼します。」

秀雄『今回の駅伝、第三区間は応援はおろか大会役員もいない山道を走る。そこでごーをしとめる・・・』

続く

(注1)アシダ・ヴァンダレイ・シルヴァはケニア人留学生。祖国に陸上を広めるため日本に学びにきている。中川さんはその通訳

_ 【秀雄と拓朗】(第15話)

秀雄はごーを始末する方法を思いついた。それはいたって古典的な方法=『落とし穴』であった。コース沿いにエイドと見せかけて落とし穴を設置するというシンプルな方法。普通の人間はひっかからないが、サルならひっかかる。「ごーは人間よりサルに近い」そう考えた秀雄ならではの発想だ。深夜、秀雄はヘッドライト、シャベル、315円分のおやつを持って罠の設置場所へと向かった。

秀雄「はぁはぁ、くそ~穴を掘るのがこんなに大変だったなんて・・・」

秀雄は苦しんでいた。1時間もの間、穴を掘り続けたのだが一向に作業ははかどらず、未だに70cmくらいしか掘り進めていない。さらに深くなればなるほど地面は固くなり秀雄のシャベルの進行を許さない。もう無理か、そう秀雄が思った時、一人の男が現れた。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第16話)

秀雄「誰だお前っ?!」

男「お前さん、そんな掘り方じゃ土は応えてくれないぜ・・・」

そう言うと男は秀雄のシャベルを取り穴を掘り始めた。さきほどまではダイヤモンドのように固かった地面がまるでプリンのようにえぐれていく。

秀雄「お前、いったい・・・?!」

男「フフフ・・・俺はカドヤ。真の穴を掘りに来た。」

これが後に裏社会の頂点に君臨する切削師カドヤしんたろうの伝説の幕開けである。その瞳は底なしの闇。地球が何億年とかけて築いた地盤、それはいわば鋼の要塞。それを意のままに削り、自らの闇に葬り去ってしまう。カドヤ、闇に舞い降りた天才が真の姿を露わにしようとしていた・・・

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第17話)

天才カドヤがシャベルを手にとってからわずか10分、穴の深さは5mにも達していた。

秀雄『あり得ない。神懸かっている。いや、悪魔じみている・・・これが本当に俺が掘っていたあの地盤なんだろうか?』

秀雄「おい、もうやめてくれ。これは落とし穴なんだ。そんなに深く掘る必要はない。」

カドヤ「まだだ。まだ終わらせない。」

そう言うとカドヤは微笑を浮かべた。

カドヤ「言ったはずだ俺は真の穴を掘りに来たと・・・こんなところで俺の渇きは満たされない。上限いっぱいまで掘る。」

秀雄「お前、死ぬぞっ!!」

カドヤ「俺はいつでも綺麗に死んでやるよ。さて、掘り進めるとするか。たとえ身を削ろうとも、そこに希望があるなら人は穴を掘り続ける。」

闘掘伝説、後にそう語り継がれるカドヤの生き様。その身一つで紡ぐ人生という糸。魔物が行き交う長い夜はまだ始まったばかり。

_ 【秀雄と拓朗】(第18話)

カドヤの掘った穴を適度に埋めて秀雄は落とし穴を完成させた。無論、カドヤは生き埋めである。

秀雄『これで準備は万全だ。残念だよごー、お前とは仲良くしたかったのに・・・』

秀雄は時機にごーを飲み込むであろう魔物に一瞥をくれて闇の中に消えていった。おやつのポテトチップスコンソメWパンチをパリパリと食べながら・・・

そして運命の日、関東高校駅伝。晴天、気温は17度、風はほぼ無風の好コンディションである。ホノマラ高校陸上部の生徒がゾロゾロと集まり始めた。

原「調子はどう?」

植竹「膝の調子も良いし、良い走りができそう。」

秀雄『まぁお前にはタスキは渡らないけどな・・・』

植竹「お前の調子は?」

原「かなり良いね。自己ベストは当たり前。もしかしたら俺の人生の最高記録が出るかも。」

秀雄『出ねぇよ。』

細井「そろそろ移動するぞ~」

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第19話)

全員で受付をすませ、掛け声をかけると、部員たちは各自のスタート地点へと向かった。ウォーミングアップ、ストレッチ、バナナを食べるなど各々が最終調整を始める。そして女子の部がスタートした。

第一区、スタート直後からブンは新宿駅で迷ってよけいに歩いた時に生じた乳酸に悩まされペースが上がらない。レース中盤も隣の選手とおしゃべりをしてしまいトップ集団とみるみる差がついてしまう。結局、全84チーム中68位で第二区にバトンパス。ホノマラ高校としては痛いスタートとなった。

ブン「森香ちゃ~ん、ごめんね~(笑)」

森香「・・・フッ(ダメだこいつ・・・)」

ホノマラ高校はこのまま終わってしまうのか? 名門校の誇りはタスキとともに森香へとたくされた。

ごー「俺の出番はまだかいね~♪」

係員「そこの君っ! 木から下りなさ~い!」

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第20話)

森香はランナーだ。入浴剤の名前でもなければ、芳香剤の名前でもない。クールビューティ、彼女がいれば風がその髪をなびかせる。そのたたずまいは、さながら、秋風に揺られるユリの花。走っている時も同様である。彼女の周りには風が吹き、コースを彩る清流となる。結局この向かい風に悩まされペースは上がらず70/84位に。涼しげな表情で彼女はタスキをつないだ。

森香「・・・フッ(後は任せます)」

尾形「無理だよ~エヘヘヘ」

言葉とは裏腹に、尾形は安定した走りで順位を徐々に上げる。練習量なら負けない。ひたむきにマラソンに取り組む真面目さ。それが彼女の強さである。

四区スタート地点、三区の選手が続々と流れ込んでくる。トップ集団の中にはウィンドラン高校の姿があった。ウィンドラン高校、長年にわたりホノマラ高校と死闘を繰り広げてきた名門校である。離れていくウィンドラン高校のユニフォームをアシダはじっと見つめていた・・・

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第21話)

第四区、アシダへとタスキが渡る。この時、順位は51/84位。

尾形「頑張って~」

アシダ「OK、マカセナ」

タスキを受け取るやいなや、アシダは鉄砲弾のように飛び出した。接地の度に地響きがするほど強い踏み込み、そのまま地面をえぐりとってしまうような強靭なキック力、そこから生まれる桁外れの推進力、スピード。黒い弾丸アシダ・ヴァンダレイ・シルヴァ、前を塞ぐランナーをことごとく貫いていく。破竹の勢いで上昇するホノマラ高校の順位。とうとう第四区の残りが3kmというところで単独トップを走るウィンドラン高校に追いつく。

アシダ「ハッハッハ、コレガケニアテイストノハシリダゼ」

ウィンドラン高校第四走「ククク、マッテタヨ」

アシダが追いつくとウィンドラン高校の第四走がまるでエンジンを変えたかのようにスピードを上げる。アシダと互角、いや、それ以上のスピード。

アシダ「コノスピード、コノツヨサ、ソシテコノオーラ・・・マサカキサマッ!?」

ウィンドラン高校第四走「ククク・・・キサマジャネェヨ、アネゴトヨビナ・・・」

ウィンドラン高校第四走、エチオピア育ちのチナツ・アベベ・ロバがアシダの前に立ちはだかる。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第22話)

黒い稲妻、チナツ・アベベ・ロバが閃光の如く走る。ここまでの走りで二人の体力差は歴然。さすがのアシダもくらいつくことができない。非情にも二人の間隔がじわりじわりと大きくなる。

アシダ「ナンテコトダ。コレジャアチナツニオイツケナイ。チャントクツヲハイテコレバヨカッタ。」

チナツ「ハダシデウチニカトウナンテアマインダヨ、コネコチャン。」

そう言い捨てるとチナツはアシダを置き去りにしていった。

最終区、トップのウィンドラン高校から1分遅れてホノマラ高校が2位でタスキをつなぐ。

アシダ「ガンバレヨ、ツウヤク。」

中川「通訳て・・・」

駅伝もいよいよ大詰め。みんなの希望を一身に背負い、中川はウィンドラン高校アンカー、花岡に挑む。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第23話)

花屋の花岡、それは世を欺く仮面にすぎない。ハナオカ・グーカン・サキコ、それが彼女の真の姿である。

4km地点 中川『やった・・・追いついた・・・』 ビシッ、ドカッ、ガスッ・・・そして中川は安らかに眠った。

こうして駅伝女子の部はウィンドラン高校の優勝で幕を閉じた。ホノマラ高校は途中棄権、シード権の剥奪、死者一名という不名誉な結果に終わった。唯一の救いがアシダの四区区間賞獲得といったところだろう。

そして、いよいよ、物語の本筋、男子の部スタート。秀雄の思惑は・・・ごーの運命は・・・次回、感動の24話

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第24話)

号砲と共に男子の部がスタート。新星拓朗がトップ集団を牽引する。やはりこの男で間違いは無かった・・・はるか彼方の中継地点から秀雄は望遠鏡で拓朗の姿を追う。

秀雄『さぁ来い! 早く来い!! 俺の元へ!!! 飛び込んで来い!!!!!!』

そして、さらにはるか彼方の中継地点からごーは裸眼で拓朗の姿を追う。

ごー『いや~やっぱり木の上は見晴らしが良いけぇ、登って正解じゃったねぇ。』

秀雄の願いが通じたのか、拓朗はなんとトップで秀雄にタスキをつなぐ。

拓朗「ファイトー」

秀雄「来たぁぁぁぁぁaaaaaaaaaa!!!!!!!!」

戦場に秀雄の雄叫びがこだまする。駆け巡る秀雄の脳内物質。β-エンドルフィン、チロシン、バリン、リジン、ロイシン、イソロイシン・・・拓朗の汗を潤沢に含んだタスキを秀雄はだきしめるように受け取った。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第25話)

秀雄は先頭をひた走る。拓朗から引き継がれたトップの座、誰にも汚させはしない。自身の能力の限界を大きく上回るハイペース。しかし、走りに乱れは感じない。まるでタスキに浸透した拓朗の血と汗から未知なる力を吸収するかのように秀雄は快進撃を続ける。そして2位に大差をつけてごーにバトンパス。

秀雄「ファイトー」

ごー「任せんさい!」

ごーの後ろ姿を見送る秀雄。何を思ったか、秀雄はしばし空を見上げるのだった・・・

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第26話)

ごーがタスキを受けてから20分、周囲の風景はうってかわり、鬱蒼とした景色が広がるようになる。ごーの嗅覚が何かをとらえる。これは・・・バナナの匂いだ。本能的に視覚が嗅覚を追う。そこには確かに1本のバナナがあった。

ごー「いや~危うくエイドを見逃すところじゃった~」

ごーがバナナに手を伸ばした瞬間、森に巣くう魔物がごーをひと飲みにした。

ごー「ウキャッ☆」

ドスンという音とともにごーは穴底に尻もちをつく。

ごー「いや~まさかエイドが工事中とは思わんかった~」

その後、ごーが閉ざされた魔物の口をこじ開けることはできなかった。駅伝中の謎の失踪。神隠しとか、山に帰ったとかいろいろな説が流布したが、いつしか人々の記憶から洗い流され、この事件を取り上げる人もいなくなった。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第27話)

ごーが消えたところで秀雄と拓朗の距離が近づくわけもなかった。もともとこれは秀雄の勘違いから起きた事件なのだから。駅伝から数週間経ったある日のことである。

拓朗「今日は練習休むわ・・・」

秀雄「体調でも悪いの?」

拓朗「うん、まぁね。それじゃ帰るから、練習頑張ってね。」

そう言うと、いそいそと拓朗は教室を出ていく。不信を抱く秀雄。

秀雄『どうしたんだろう・・・俺に隠し事・・・?』

清「さてはまっつん、今日はデートだな・・・! 不愉快だ~不愉快だ~不愉快だ~~(ノ゚▽゚)ノ ⌒~ 」

秀雄の隣に突如清先生が現れる。第13話以来の登場とあって異様にテンションが高い。

清「あれっ?! 秀雄君、居たのか~。えっ?! 拓朗君の様子がおかしい?! そうか~それは多分、今日デートがあるからじゃないのかなぁ~。えっ?! 相手は誰かって?! しょうがないな~ここだけの話だよ~実は・・・」

もうそこに秀雄の姿は無かった。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第28話)

秀雄は駆ける、拓朗の元へ、狂ったように。拓朗の靴にこっそりと付けた発信機がこんな形で役に立つことになろうとは秀雄は予想だにしなかった。

秀雄『ひどいよ・・・そんな・・・ひどいよ・・・』

拓朗のいるところまで10km。運命の糸に引っ張られるように秀雄は疾走する。気がつけば10kmを34:35の自己ベストで完走。これが愛の力。

そこには拓朗と花岡の姿があった。近くの草むらには二人を覗き見る清先生の姿もあった。(注1)

秀雄「拓朗・・・お前もしかして・・・」

拓朗『もしかして秀雄も花岡さんのことを・・・?』

秀雄「お前、ひょっとして、女が好きなのか?」

拓朗の脳裏をよぎるある予感。拓朗の背筋に悪寒が走った。

続く

(注1)清先生は電車で移動した。なぜ二人の位置が分かったかは不明。

_ 【秀雄と拓朗】(ネイチャーラン特別編)

カタカタ・・・

拓朗「あれ? 秀雄、何それ?」

ごー「拓朗はおバカじゃね~これはノートパソコンっていうんじゃよ。」

拓朗「そうじゃなくて、そのパソコンで何をしているのかを聞いてるんだけど。」

秀雄「これは今週末に開催されるさくら道国際ネイチャーランのホームページだよ。ランナーの名簿やコースが載っているんだ。」 http://shirotori.gujo.to/sakurainr/HP/sakurainr1.htm

拓朗「けっこうタフなコースだなぁ・・・」

ごー「出場者は24時間走の日本代表とか猛者揃いじゃね! どんなレースになるか気になるね~」

秀雄「当日の途中経過を知りたければこれを参照すると良いよ。」 http://shirotori.gujo.to/i/sakura/i_top.html

ごー「便利じゃね~なんだか俺までわくわくしてきたけぇ、ちょっと走ってくる!」

秀雄「スタートは3分刻みの流れスタートらしい。ちなみにNo105の人は6:03スタート、No106の人は6:06スタートなんだって。」

拓朗「関門は106.9km=14h、143.0km=20h、172.6km=24h30m、212km=30h30m、250km=36hらしい。最初の関門がけっこうきついね。」

秀雄「じゃあランナーのみなさん頑張ってね、あはっ☆」

_ 【秀雄と拓朗】(第29話)

秀雄のホモが発覚してから二人の距離は劇的に広がった。教室でも部活でも二人が会話をすることはなくなった。残されたのは息詰まるような空気と秀雄の思い。まだチャンスがあるのではないか・・・? しかし、時がたつにつれて、そんな秀雄のささいな希望は空へ拡散していく。

朝、いつものように秀雄は教室に入りまっすぐ自分の席へ向かう。横に拓朗の姿は無い。

ガラガラッ・・・清先生が来る。いつもと違う面持ち。生徒たちはすぐにそれに勘づき清先生の言葉を待つ。

清「・・・まっつんが、拓朗君が何者かに誘拐されました・・・!」

秀雄の中の何かが凝縮を始めた。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第30話)

拓朗の自宅に警察関係者が続々とやってくる。中では拓朗の両親が事件の詳細を河田警部に説明している。

拓朗の父「・・・というわけです。警部さん、息子は、拓朗は助かるんでしょうか?」

河田「心配いりません。今回は私の切り札。名探偵、野々内を呼んでおりますので。もうすぐここに来るよう手配しております。」

約束の時間に1時間遅れて野々内は登場した。

河田「ののさん、今日もよろしくお願いします。事件の概要についてですが・・・・ということです。あと1時間ほど経ったら犯人から電話で連絡が入るそうです。」

野々内「分かった。お父さん、お母さん、安心してください。犯人は必ず私がつきとめてみせます。もちろん息子さんも無事でね。私にも息子がおります。私のすべてをかけてこの事件の解決に努めます。」

野々内探偵の魂が燃え上がる。一瞬の隙もなく電話を睨み続ける。敏腕探偵野々内の伝説が始まろうとしていた。

電話が入る予定時刻を1時間過ぎた。未だに犯人からの連絡は無い。

野々内「もうこれは迷宮入りやな~・・・」

野々内探偵は飽きるのが早い。野々内が一服しようと腰を上げた時、電話の音が部屋に響き渡った。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第31話)

全員の視線が電話に集中する。

河田「奥さん、落ち着いて、犯人の話をよく聞いて、できるだけ話を続けるように努力してください。」

野々内「逆探知開始やで~」

拓朗の母が受話器に手を伸ばした瞬間だった

秀雄「もしもし! 僕は秀雄、あはっ☆ 拓朗は、拓朗は無事なんですか?!」

秀雄の乱入を契機に清先生、陸上部の仲間たちが駆けつける。あっけにとられる河田警部。ことの重要さに気付いた両親が慌てふためくが、秀雄から受話器を奪い取ることもできない。二人を野々内がなだめる。

野々内「まぁこれくらい予想通りや。大事なのはこの会話から犯人の居場所をつきとめることですよ。」

犯人「人質は無事だ。無論、今後の処遇はお前達しだいだがな。」

変声機を使っているのか、犯人の声は機械的である。犯人vs野々内、二人の壮絶な頭脳戦が始まった。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第32話)

野々内「犯人は変声機まで使っている・・・よほど注意深い人物なのだろう。ちょっとやそっとの努力では犯人とその場所を特定することはできないだろう・・・」

かつてない強敵との闘い。野々内は電話越しに存在する空間に思いを馳せる。

秀雄「本当に拓朗は無事なのか? 声を聞かせてくれ!」

犯人「そりゃ~無理じゃろ~ひょっとしたら拓朗が情報を漏らしてしまうかもしれないけぇ・・・」

秀雄「犯人はごーです! 至急北千住に警官を向かわせてください!」

ごー「うひゃぁっ☆ なんでバレたんじゃ?!」

数分後、警官達がごーの自宅を取り囲んだ。ごーは武装して人質を盾に立て籠もっているとの情報。

野々内「お前たちあいつの友達なんやろ? ちょっと話してきて自首させたらどうや?」

自らの安全のためには一般人の安全もかえりみない名探偵野々内。彼のそんな姿に心を打たれたのか、秀雄をはじめ、清先生、陸上部の友人らも一緒にごーの家へ向かった。はたして彼らに明日はあるのか?

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第33話)

秀雄「ごー、なんでこんな馬鹿なことを・・・?」

ごー「これは報復じゃけぇ、あの事件を忘れたとは言わせんよ・・・! 秀雄が作った落とし穴のせいで俺はあのバナナを食べれなかったけぇ、秀雄の大事なもの=拓朗を奪うことで復讐しようと誓ったんよ。」

秀雄「・・・なぜ俺がやったと分かった?」

ごー「こいつに聞いたけぇ」

カドヤ「俺はカドヤ、真の穴を掘りに来た・・・」

地面から出てきたその男はまぎれもないあの伝説の穴掘り師、カドヤであった。

秀雄「お前・・・いったいどうやって・・・?! なぜお前がここにいる?!」

カドヤ「フフフ・・・やはりな。お前はまだ穴を掘る土俵にすら立てていないんだ。うわべだけの、みせかけの穴しか知らない男の発想。痩せた考え・・・」

そう言うとカドヤはまた穴を掘り、地中深くへ消えていった。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第34話)

ごーが懐から銃を取り出す。銃口の先には拓朗。

ごー「さぁお別れの時間じゃ。恨むなら秀雄を恨むんじゃね。」

拓朗「まじかぁ、死ぬの嫌だなぁ・・・」

秀雄「待てっ! これはもともと俺が引き起こしたこと。撃つなら俺を撃てっ!」

拓朗「たしかに。」

ごー「う~ん、たしかにそうじゃね~」

銃口が秀雄の方を向く。秀雄の記憶が走馬灯のように蘇る。秀雄の人生が刹那に集約される。自らが歩んできた人生を再び味わいなおす。自然と秀雄の口から凝縮された何かがこぼれる。

秀雄「・・・あはっ☆」

銃声

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第35話)

轟音の後、静けさが部屋にしみ渡る。秀雄が閉じていた瞳を開く。そこには崩れ落ちる清の姿があった。身を呈して秀雄を守ったのだ。

清「これで・・・良い・・・あはっ☆」

清々しい笑みとともに清は息を引き取った。享年28歳。

ブン「先生~死なないでくださ~い(笑)」

森香「・・・フッ(キャ~(叫))」

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第36話)

野々内「お~い、銃声と悲鳴が聞こえたけどどうかしたんか?」

野々内が玄関から入ってくる。そして無残な清の亡骸を目の当たりにする。責任という言葉が野々内の脳裏をよぎる。

野々内「おい、そこの犯人、ちょっと俺と取引せんか?」

ごー「どんな取引じゃ?」

野々内「このままじゃお前は殺人犯になってしまうし、俺は一般人を巻き込んだ責任を負わされることになる。だから、こうしよう。お前は自首しろ。そのかわり俺はこの死体を見なかったことにする。」

原「こいつ最悪なんですけど」

野々内「お前はアホやなぁ。俺は自分がかわいくてこんな提案してるんちゃうで。これ以上犠牲者を増やさないために言ってるんやで。」

野々内はこういう時は筋の通った理屈を並べ立てる。

ごー「たしかに俺も殺人の罪を負うのはごめんじゃけぇその取引にのることにするわ。」

森香「・・・フッ(それじゃあまずこの死体をどうやって処分するかが問題ですね)」

ごー「ちょうど明日は可燃ゴミの日じゃったけぇ、ごみ袋に入れて捨てることにしようかね~」

アシダ「ステルクライナラタベマショウヨ。」

野々内「こんなん食えるんか?」

アシダ「ケニアデハヨクアルコトデス。」

ごー「エバラ焼き肉のたれならあるけぇ、なんとかなるんじゃないかね~」

拓朗「でも清先生は何か病気もってそうだなぁ」

ブン「ひど~い(笑)」

森香「・・・フッ(ここにちょうど良い穴があるからここに捨てませんか? 死体を切り刻む手間も省けますし。)」

尾形「すごく良いと思います!」

一同もそれに賛成する。すると即座に全員でまるでサッカーボールを蹴るかのように死体を穴へ蹴り込んだ。ボールは先生。

残忍、狂気、倫理観のかけらもないまさに外道。そんな生徒たちを見て自分の教育は間違いなかったと、目を細めて一同を見つめる細井であった。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第37話)

死体処理が済み全員が家から出てくる。すぐさま河田警部が歩みよる。

河田「みなさん無事ですか?」

野々内「もちろんやで。この通り犯人も反省しとるし一件落着や。」

河田「銃声がしたようですが・・・?」

野々内「あれは犯人が今までの愚かな自分を撃って新たな人生を進み始めるための号砲や。誰にも怪我はないで。」

河田「そうですか・・・ありがとうございました。あとは私に任せてください。」

そう言うと河田はごーの肩を優しく叩いた。

河田「さぁ、行こうか。」

河田とごーを乗せたパトカーは重低音を響かせて消えていった。

続く

_ 【秀雄と拓朗】(第38話)

事件の後、みんなはそれぞれ帰路についた。秀雄は一人で荒川を散歩してから帰ることにした。水面に夕日が映え、秀雄の心を優しくも焦がす。風のように走りぬけたこの数カ月、いったいどれほど貴重なものをなくしたことだろう。親友、ライバル、先生・・・まぁ先生はどうでも良いか・・・。この先何が待っているのか、何でも良い。もう失うものもない。路肩に捨てられた空き缶に自分の姿が重なる。心にじわじわと波が押し寄せるのを感じた。たまらず空き缶を全力で蹴り飛ばす。

「サッカーかい? 俺もまぜてくれよ。」

視線を上げるとそこには拓朗の姿があった。風が強く吹き始めていた。

_ 【秀雄と拓朗】(第39話)

秀雄「拓朗、どうしてこんなところに?!」

拓朗「礼を言いに来たんだ。さっきは俺を守ってくれてありがとう。」

秀雄「そんな、俺は何も・・・」

秀雄の頬が茜色に染まる。

拓朗「嬉しかった・・・本当に・・・嬉しかった。」

秀雄「・・・そんな風に言わないで・・・優しすぎるよ・・・拓朗は・・・やさしすぎるよ・・・」

大粒の涙がこぼれおちる。秀雄は拓朗の顔をまともに見ることもできない。

拓朗「さて、俺はそろそろ帰るよ。これで良いのかい? もう何も言わなくて・・・?」

手がさし伸ばされたようだった。あと一歩、どうしても踏み出せなかったところに。

この言葉に秀雄は決意を固める。

秀雄「拓朗っ!! 俺と■○◆◎▽してくれぇぇぇっっっ!!!!!」

次回、感動の最終回!

続く

_ 【秀雄と拓朗】(最終話)

拓朗「ハァハァ・・・」

秀雄「ハァハァ・・・拓朗・・・もう無理だよ・・・ハァハァ」

拓朗「ハァハァ・・・まだいけるよ・・・あと一本・・・ハァハァ」

事件から数日後の陸上トラックにはインターバル走に励む二人の姿があった。

拓朗「お疲れ~」

秀雄「お疲れ~だいぶ調子が上がってきたね。次の大会が楽しみだよ。」

ベンチに腰をかけて談笑する二人。

ブン「二人ともお似合いですね~(笑)」

拓朗「いや、それはない。」

森香「・・・フッ(ところで今度の日曜日みんなで遊びに行きませんか?)」

秀雄「いや~残念だけどその日はちょっと・・・」

拓朗「くそ~なんで女の子からお誘いがあった日に限って予定が入ってるんだ。」

ブン「あれ~ひょっとして二人でデートですかぁ(笑)?」

秀雄と拓朗「・・・あはっ☆」

終り produced by 海P小谷

_ 【秀雄と拓朗】(人気投票篇)

秀雄「みんな、『秀雄と拓朗』を最後まで読んでくれてありがとう。特に登場した人は苦情をしないでくれてありがとう!」

拓朗「これで俺も主役を降板かぁ」

ごー「あれっ? 主役は俺じゃなかったかいね~?」

清「いや、真の主役は俺だ~」

カドヤ「いや、真の穴は俺が掘る」

秀雄「まぁまぁ、それじゃあここで読者のみんなに決めてもらいましょう。」

尾形「良いと思います。」

秀雄「読者のみなさんは、①この作品で誰が一番好きか②その人が好きな理由or好きなシーンをコメントしてください! 匿名可です。」

ごー「なるほど、例えば、『①清先生②教室の扉を開けるときのガラガラッっという効果音が良い』みたいな感じじゃねっ!」

秀雄「優勝キャラクターは次回作に登場したり、スピンオフ作品ができるかもしれません。だからみんな投票よろしくね! みんな今までありがとう! あはっ☆あはっ☆あはっ☆」

_ 【人気投票結果】

1位(3票) 秀雄
2位(2票) カドヤ、ごー、清先生、野々内、森香
3位(1票) アシダ、ブン、拓朗、通訳

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Last-modified: 2019-08-22 (木) 20:56:47 (1718d)